「許されるように、生きろ」は残酷で愛にあふれた言葉

『アンナチュラル』で一番心に「めりっ」と食い込んだ言葉が、「許されるように、生きろ」だった。
 
 
高校生の白井くんは、いじめに苦しむ中で唯一助けてくれた友人を失う。
友人がいじめの標的となり、自ら命を絶ってしまったのだ。
自分が助けられなかった罪悪感に耐えられず、白井くんも命を絶とうとする。

それを止めようと、井浦新さん演じる中堂の絞りだした言葉が、

「許されるように、生きろ」

だった。
 
 
鼻の奥から頭の先まで、ツーンと光が突き抜けるような衝撃があった。
これはすごい台詞だな・・・と。
 
 
 
罪悪感に苦しむ人に対して、
 
「あなたは悪くない」
「死なないで」

と言うのは簡単だと思う。

でもそれって見方を変えると、

「自分が悪い」
「死にたい」

という感情を否定することにもなる。
 
 
存在を否定されるのは誰だってイヤだ。
それは感情も同じだと思う。

どんなにネガティブに思える感情であっても、なかったことにしないでほしい。
それは膨らみきった風船をぎゅうっと圧迫するようなもので、しまいには苦しくなって破裂してしまうから。
 
 
 
勘違いしてほしくないのは、「死にたい人は死ねばいい」と言いたいわけじゃないってこと。
 
 
 
生まれた感情は「ここにいるよ」と伝えてくれている。
まずは「そうだね、そこにいるね」と存在を許してあげること。
そこから救いが始まるんだと思う。
 
 
 
だから「許されるように、生きろ」という台詞が好きだ。
罪悪感の存在を認めた上で、生きる理由にシフトしてくれている。
 
はぁ・・・野木亜紀子さんの脚本すごいなあ・・・。
 
 
罪の意識をつきつけてくるという意味では、すごく残酷な言葉でもある。
けれど、心の奥底にあったはずの「許されたい」願いも汲み取って、生きる力に昇華する。
とても哀しくて、愛にあふれた台詞だ。
 
 
この白井くんが『ラストマイル』で活躍してるんだね。
この台詞に込められた愛を確かめに、映画をもう一度観に行きたい。